フリースタイラーとしてのR-指定
R-指定は大阪出身のラッパー。UMB三連覇達成して…って今の世代の人たちには説明する必要もないだろう。今はバトル数も減らしてCreepyNutsとしての活動がメインだし、今頃こんな記事を書いてるほうがどうかしてる。
R-指定が成し遂げたこととは？
R-指定の偉業は三連覇達成というより新しいスタイルを確立したことだと思う。かつてのR-指定は替え歌のようなフロウを使ったり、どちらかというと切れ味の鋭いフロウの使い手だった。それまでになかった新しいフロウもどんどん使うし、韻も踏めるし、ひよっこみたいな見た目してERONEに100対0で勝ったり。まさにルーキーが現れたって感じだった。そして、R-指定の系譜は、世代的にも「K-razy」とか「じょう」に受け継がれた。他にも沢山いると思う。バトルシーンは、フリースタイルダンジョンが始まる前に階段を一つ上がっていたように思う。その流れを作ったか、少なくとも渦中にいた一人がR-指定で、その影響で生まれたラッパーが少なくないはずだ。
R-指定のバトルスタイル
で、R-指定の方は、名が知れ渡ってからはどちらかというと噺家みたいなスタイルに近づいていった。フロウというよりも中身で勝負する方向にシフトしたように思える。より上手いこと言いがち。対ニガリ戦の「色」のライン、対晋平太戦の「花」のラインとか。
コレ系の上手いこと言ったんでシリーズは9for他による「数字」のラインや、誰だか忘れたが「ドラえもん」のラインまである。こういうのは関心こそすれ、パターン化してくるとツイッターで良くね？って思います。すごいけどね。
その少し前、三連覇前後は壮絶なラップをしてた。連覇前はプレッシャーに潰されそうになりながらも胃の痛みを堪えてなんとか熟すラップ、連覇後は（『刹那』を聞いていれば分かるが）プレッシャーに加えて疑心暗鬼になったラップ。
さらに遡るとバシバシ切れるフロウでラップをしていた。フロウは文字で表現しにくいところが困る。跳ねる、に近い気がするも、跳ねるとはちょっと違って、切れ味がいい感じ。替え歌も得意だったし、替え歌ラッパーでディスられてた時もあった。ていうかジャスライカとさながらってよく使ってた。
ちなみに、過去にはKOPERUとコッペパンというクルーを組んでいたことがある。KOPERUの猫背が気になって仕方がないし、R-指定は細くてかわいらしいので是非動画を見てほしい。
R-指定がバトルに強い理由
何といってもR-指定はバトルが強い。まずラップの上手さが基本にあるのは前提として、フリースタイルバトルにおける口喧嘩は、正しさよりも観客を引き付けるかどうかが勝負。R-指定が強いのは、客受けの良いラインや、先攻後攻も上手く使えるのが理由の一つだろう。
客受けの良いラインっていうのは、例えば「みんなが乗りたかったビートを無駄にしてはいけない」理論とかだ。ズルいラインだ。辿りつけなかったMCへの配慮◎、DJへの配慮◎、ヒップホップ度◎、客、味方に付け度◎。こんなのでぶっ叩かれたら相手は反論の余地がない。ビートは大切に。
あとは「０から這い上がるのがヒップホップ」理論。勝者より敗者のほうが多いから、敗者視点で語る方が共感を得やすい。キッズたちに憧れさせる大成功したラッパー、彼らに憧れても共感って少ないでしょ。
ラップに限らず時代は「共感」。少女漫画に出てくる男の子の乙女みたいな歌詞、あれだって共感。あれに共感するのは十代から三十代までの乙女と、草食系中性風肉食ワンチャン女と寝たいマン。話が逸れている。
先攻後攻の使い方が上手い例を上げると、UMB2014のDOTAMA戦。
このバトルはお涙頂戴を止めろって言いながら、最後のバースはお涙頂戴だ。非常にズルいバトル運びになっている。この時のR-指定は客が味方についてるし、最後のバースだからDOTAMAサイドからディスる機会はもうない（DOTAMAがマイク通さずに指摘してるようにみえるけどね）
R-指定はこういうのが上手い。ズルいズルいと言ってるが、これは明確にR-指定の強みだ。ハイ論破スタイル、言ったら勝ち、有無を言わせない。これは口喧嘩で絶対に強い戦法。そしてこれをリアルタイムでできるんだからやっぱりすごいよ。
小ネタ
個人的には映画ネタが好き。節々にR-指定個人の趣味であろう映画ネタを入れたラインで上手いこと言ってる。R-指定も内心ドヤ顔だろう。でもバトル中の沸きはイマイチ。ヒップホップ以外からのサンプリングは替え歌に通じる良さが絶対ある。
これはフリースタイルバトル全体について思うことだが、MC同士の知能に差がありすぎると全く話が通じないときがあって、もったいない。だから逆にR-指定を倒すためにはR-指定と会話をしないことが鍵かなと思ったりする。R-指定に勝てる気がしてきたぞ。終わります。
